松の内である1月6日、烏川渓谷緑地市民会議森林保全チーム主催の「斧入れの儀」が行われました。会場は穂高の牧にある県営烏川渓谷緑地森林エリア、山麓線から1キロほど山道を上がってきたところです。麓は晴れていたのに、小雪が舞っています!さとぷろ。サポーターにもお招きがあり3名が参加、事務局2名もにぎにぎしく参加させていただきました。

まずは準備体操、お正月でのんびり過ごしていたみなさん、しっかりと身体を動かしてけがのないようにお願いしますね。

三つ紐伐り(みつひもぎり)という伝統的な伐り方をして、今日は1本のサワラを寝かせます。今年で4年目の恒例行事となった「斧入れの儀」、1月にサワラを1本、2月にヒノキを1本いただく予定です。新月伐採といって寒い時期の新月に近い頃に伐った木は、虫が入りにくかったり、曲がりが出にくかったりと、いろいろ良材の条件が整っているそうです。

サワラの命をいただくので、お神酒とお塩を周りにそそぎ、ヘルメットや帽子をとって二礼二拍手一礼。そして、もし枝がかかってしまった時のために、ロープと滑車とチルホールがセットされました。ご指導いただくのは、山仕事創造舎のお二人です。スルスルと一本はしごを上って行かれるのは、さすがプロ!

寝かせる方向めざして、斧を入れていく場所を決めていきます。根が張っているので、なかなか難しそうです。チェンソーで伐るのと違って、3か所のつるを残します。

つるの場所が決まったら、3人で斧を入れていきます。カーン、カーンと森の中に斧の音が響きました。伐倒がはじめての方もいるので、諌山リーダーにいろいろな説明をお願いしました。斧に必ず入っている線(3本と4本)のこと、形のこと、はじめに立てかけること。つるの入れ方や役割、サワラという木そのもののことなどなど。

そうそう、今回は斧を3本新調されたそうで、斧の入りが良く調子が良いです。受け口入れ用に長いのを2本、追い口入れ用に短めのを1本、信州型の斧を作ってもらって四国から取り寄せたそうです。

唯一お子さんと参加のサポーターさん。パパが見守る中、貴重な左利き(右利きと左利きで、斧の入れやすい部分が違います)斧が重いのに、はぁはぁ息があがるぐらい頑張りました!

3か所のつるが残り、斧を入れていく3か所が幹の中でつながっていきます。向こうが見えた瞬間には、みんなで歓声をあげました。貫通すると、斧がぶつかってしまうので一人ずつの斧入れとなります。つるのバランスを見て、手で触ってしっかり確かめながら、慎重に進めていきました。

最後は1本の追いつるを伐り、残りの2本のつるを蝶番のようにしていきます。さすが諫山リーダー、斧の入れ方が力強い!みなさん安全な場所に退避します。サワラの樹冠が動き始め、バリバリッと音をたて狙った方向ぴったり…と思ったら、45度ほどで近くの木に枝がかかって止まってしまいました。

これは想定内、チルホールでワイヤーを引っ張ると見事にズドンと地面に寝かせられました。「おおぉ~!」という声と拍手が沸き起こりました。

さっそく株元に行き、切りくずをきれいに払って年輪を数えます。う~ん、70年ぐらいでしょうか。70年間、ここに立ち続けてきた命をありがたくいただきます。

樹冠の梢を真ん中にさします。これは樹と山の神に感謝することと、梢と切り株の間の部分をいただきますという意味があるそうです。また、自然更新する種子は、地面に落ちたものより切り株や倒れている木に落ちたもののほうが成長が良いことも教えていただきました。時々、人が植林したのではないかと疑うぐらい、まっすぐに並んで生えている天然の針葉樹があるけれど、それは倒れている木に落ちた種が発芽したものだそうですよ。

最後にみんなで切り株を囲んでていねいに一礼。大切に使わせていただきます。

信濃毎日新聞の記者さんがずっと取材をしてくださり、サポーターさん親子がしっかりインタビューされていました。どんな記事になるのか、楽しみにしていましょう。

せっかくなのでみなさんで集合写真。斧をもってポーズ!斧はヨキとも言います。ヨキ(良き)一年になりますように!!!

サワラはこのままゴールデンウィーク明けまで寝かしたままにします。「葉枯らし」といって、枝葉をつけたままのほうが蒸散して乾くのが早いのです。新月伐採は、ふもとの方向に倒して葉枯らしするのも一つの条件です。建材として使われることが決まっている幸せなサワラですね。

一般的にヒノキが建材として使われるイメージなのですが、サワラもなかなかの材だといわれました。ヒノキは色が濃く飴色に変化していくのですが、サワラは白いままで水にも強く、もっと使われるべきだとも。ただ、なかなかサワラは出てこない材でもあるとか…。この烏川渓谷緑地森林エリアは水が豊富なため、ヒノキはトックリ病といって根元が膨らんでしまうものが多いのです。逆にサワラには適した場所ということで、今日のサワラも立派な材となるでしょう。

講師の山仕事創造舎さん、主催いただいた烏川渓谷緑地市民会議新進保全チームさん、そして参加者のみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。